【最終話直前まとめ】”じゃあつく”が教えてくれた、”気づき”の数々を振り返る。

ドラマ

今クール、回を追う毎に視聴率と配信回数を伸ばして、最終的に社会現象寸前にまで迫ったドラマと言えば、毎週火曜10時にTBS系列でオンエア中の『じゃあ、あんたが作ってみろよ』。

旧態依然とした男女の在り方の「当たり前」や「普通」をもって、自分を完璧だと信じてやまなかった”亭主関白男”の勝男(竹内涼真)が、理想の男性には献身的に尽くすことが女の幸せだと疑わない”至れり尽くせり女"だった鮎美(夏帆)に、プロポーズを拒絶されることから物語は始まりました。

ストーリーの出だしは、フラれた勝男をよそに、自由な女性へと変貌していく鮎美に対して、いつまでも変われずに苦悩する勝男の痛々しい対比でも描かれていくのかなと、僕などは安易に想像していたものでしたが、このドラマは、そんな安易なイメージをもするりとすり抜け、まさに令和という多様性の時代における、僕らが「気づくべきこと」を提示し、大いに考えさせられるストーリー展開を見せてくれました。

そこで、2025年12月9日(火)に最終話を迎える『じゃあつく』が、これまで僕たちにどんな「気づき」を見せてきたのか?

勝男と鮎美はどんな結末を迎えるのかを予測する前に、僕らはこのドラマを振り返り、ここまで提示された「気づき」をまとめ、総括しておくべきじゃないかと思って、今日は話を進めていこうと思います。

「化石男」勝男が、あゆみが作った筑前煮を自分で作ってみようと思うに至ったその姿は、不器用で情けないながらも可愛らしい。

ここから勝男の改心&成長物語が始まったんだなと思うと、無性に愛おしく感じてしまいます。


勝男に別れを告げた鮎美は、自分を変えようと髪色をピンクに変え、クラブに出入りし、テキーラを煽って踊るという、今まで通ってこなかった行動をとり、「新しい自分」に対する意識を覚醒させます。

しかし、表向きの自分らしさの反面、これまの価値観から脱却できない場面も随所に。そこで感じる孤独感の中、いつもふと「勝男さんなら…」という思い出を蘇らせ、弾けきれない自分をもどかしく思うこともしばしば出てきます。

一方勝男は、あゆみへの想いを料理に転嫁させ、どんどん料理上手になっていく。

と同時に、後輩たちとも次第に打ち解け、そのアドバイスを聞き入れていくようにもなっていきます。

また、その流れで始めたマッチングアプリで出会った肉食系女子・椿とは、お互いフラれたもの同士というシンパシーから、男女を超えた友情が芽生えます。

この後輩たちと椿の後押しが、勝男の価値観をどんどん変えていき、勝男は徐々に、化石男から脱却していきます。

「男に尽くすのが女の幸せ」という価値観だった鮎美にとって、フリースタイルの結婚生活を送る渚と太平の感覚は、目から鱗もので、その考え方や価値判断の基準は、自分を変えたいと思う鮎美にとっての指標となっていきます。

「あゆメロにとって、フツーって何?」という渚の問いかけは、鮎美にとって考えたこともなかった、自分の人生の新たなキーワードとなっていきました。

第5話で登場する、勝男の兄で蛯原家の長男・海老原鷹広(塚本高史)は、夫婦仲がうまくいっていないことに内心悩んでいました。その原因は不妊でしたが、それを夫婦で解決していくという形に持って行けず、夫婦仲が冷め切っていたのです。

それでも、久しぶりに東京で勝男と会った鷹広は弱みを見せまいと振る舞い、とり天が食べたいとわがままを言う。

その様子に何かを感じた勝男は、鷹広を励まそうと、とり天作りに奮闘します。

そのとり天を渡す際に「兄さん!心を閉じ込めないでほしい!」と力を込めて訴えます。

その言葉と、鮎美との共同作業で作った「とり天」の味が鷹広の気持ちを動かし、夫婦の会話を取り戻すきっかけを作るのです。

新しい人生を歩き始めた鮎美にとって、心許せる存在になった、新恋人のミナト。優しくて理解ある彼に入り込もうとする鮎美でしたが、誰とでも仲良くでき、元カノでさえも当たり前のように遊ぶことができるミナトに、鮎美は少なからずジェラシーと不安を感じてしまいます。

そしてついに「昔の友人とは付き合わないで欲しい」と自分の気持ちを打ち明け、ミナトはそれを受け入れますが、そのあと鮎美が言った何気ない一言が地雷だった!

ミナトは、まったく結婚願望がなかったのです。

そしてそれは、鮎美にとっては思いもよらない誤算でした。

「この世に、結婚しないなんて発想があったの?」

それは、鮎美にとっては青天の霹靂だったことでしょう。

勝男と鮎美の家族が対面する第7話。両家の会食で2人が分かれている事を切り出せずに終わってしまった後、2人は、勝男の2番目の兄、虎吉・恵・真鳥親子に会います

虎吉親子は、もう長いこと実家に顔を出していませんでした

その理由が、娘、真鳥が「女の子らしくない」とことに起因。

「男は男らしく、女は女らしく」というのが常識な海老原家の価値基準に、真鳥を晒したくないと言う思いからでした。

「真鳥の好きなように成長していってほしい」と願うが故に、帰省を避けていた事を知ったのも、勝男と鮎美にとっては大きな気づきとなったはずです。

LGBTQ+ pride celebration with hand and crowd cheering

著作者:rawpixel.com/出典:Freepik/

海老原・山岸両家の初顔合わせの席では、2人がすでに別れていることは表明できなかった二人でしたが、その日1日を共に過ごしたことで、2人はお互いを見つめ直す時間が作れました。

ただ、別れてしまっていることは事実。

結局2人は、お互い「今日は楽しかった」と心の底から思えた反面、だからこそ、やはりお互いの親には別れた事実を伝えなければならないと決意し、それぞれにその報告をしました。

しかしこれで、いったん話は決着がつきましたが、これは、二人が名実ともに別れたと言うより、お互い「リセットできた」と思った瞬間だったのかもしれません。

これまで2人は色々な「気づき」を重ねてきたからこそ、一度きちんとケジメをつけることができたのではと思います。

第1話でいきなり破局を迎えた2人は、その後それぞれが、その「別れ」を巡って、色々なことを感じ、考え、行動した結果、お互いのことをまた見つめ直すように変化してきました。

何よりも成長したのは、2人に備わった、自分たちのこれまでの関係性を客観的に見ることができるようになった、ということ。

2人の関係はリセットできたけれど、リセットされた関係は、また1から始められる、ということでもあります

どうやら2人は、それに気づき始めているよう。

このように、1話毎に、少なくとも1つは勝男や鮎美、また2人を取り巻く人たちにそれぞれの「気づき」があり、それを見ているうちにいつの間にかこちら側も、これまで自分が囚われていた「従来の価値観」というものに気づかされ、少しずつ変わっていくというストーリー運びが、このドラマをここまで人気にさせた「スパイス」と言えるでしょう。

そして、その折々に、料理が絡んでくる。

「じゃあ、あんたが作ってみろよ」というタイトルは、決して投げやりな捨て台詞ではなく、どちらかと言えば「じゃあ、あなたも作ってみようよ」という、いわば”共有感覚”に近い意味が込められているのかなと、僕は感じてきました。

そして、勝男と鮎美は、一旦別れた後、それぞれが料理を作る、という行為を通じて、お互いの気持ちや立場を理解できるようになり、再び、距離を縮めることができたのではないかと思います。

つまり、このドラマは、2人の気づきと反省が織りなす、

今まで当たり前だと思っていたことを、一度立ち止まり、考え、やってみて、最終的にお互いを認め合い、話し合い、またわかり合っていく過程を描写した物語だったんだと言えます。

第9話の最後に、勝男は鮎美に、静かにこう言いましたよね。

「もう一度やり直そう、俺たち。今の俺たちならうまくいくと思うんだ」

もはや僕にとっては、これが、カツオの大好きなトレンディドラマのような結末になんてならなくていいとさえ思います。

渚と太平が等身大で自然体な結婚生活を送っているように、勝男と歩みもまた、ここまでの道のりで2人が得た「新たな価値観」をもって、お互いを認め合いながら共に生きていくための、2人だけの形を見出すんだろうな、そしてそれは、どんな形なんだろう、ということに期待を持ちます。

もちろん皆さんも、それぞれが得た感覚を持って、この2人のラストを想像して楽しめばいい。

もっともそれは、「ラスト」ではなく、2人の新たな「スタート」になるってことだけは、はっきり言えると思うのです。

さあ、原作マンガもまだ完結していない、ドラマオリジナルの「結末」がどんなものになるか、楽しみに待とうではありませんか!

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